点検記録をまとめる、過去の報告書を探す、データの変化を見つける。こうした業務にAIを活用できれば、書類仕事に追われる時間が減るかもしれません。一方で、「自分が身につけた知識は、これからも必要なのか」と気になる方もいるでしょう。

考えたいのは、仕事が丸ごとなくなるかどうかより、任せられる作業と人が確認すべき仕事の境目です。電気主任技術者にとっては、出てきた答えを設備の実態に照らし、必要な対応へつなげる力がますます大切になります。

AIが得意な作業と、現場で確認すべきこと

経済産業省のスマート保安アクションプランでは、遠隔監視やAIによる異常検知などの活用が扱われています[1]。ここでいう異常検知と、対話型の生成AIによる文章作成は、用途も評価方法も異なります。「AIを使う」と一括りにせず、何を支援する仕組みなのかを理解することが出発点です。

例えば、監視システムに普段とは違う数値が表示された場面を考えてみましょう。設備の変化なのか、運転条件が違うのか、計測側の不具合なのか。確認すべき対象を絞るには、単線結線図、過去の記録、現場の状況などを組み合わせる必要があります。

「異常あり」の表示だけでは、対応は決まらない

同じ警報でも、直前に工事があった場合と、天候が急変した場合では、確認したいことが変わります。現場にいる人、設備メーカー、管理責任者などに何を伝え、どの手順で判断するかも整理しなければなりません。

AIの出力を見てすぐ結論を出すのではなく、確認できた事実と、まだ分からないことを分ける。そのうえで、保安規程や社内手順に沿って対応する。これまで現場で積み重ねてきた「確かめる力」が、ここで活きます。

経験を、再現できる判断の形で残す

ベテランの方ほど、「いつもと違う」と感じ取る場面があるはずです。その感覚を自分だけのものにせず、何を見てそう考えたのかを記録すると、チームの判断にも役立ちます。

例えば、測定値だけでなく、測定時の負荷や天候、直前の作業、比較した過去の記録を残します。異常と判断しなかった場合も、その根拠が分かれば、後から状況が変わったときに検討し直せます。結論だけの報告よりも、判断の過程がある記録の方が、教育にも改善にも使いやすくなります。

これは派手なDXの実績がなければできない仕事ではありません。毎日の報告に「そう判断した理由」を一つ加えるだけでも、経験の伝わり方は変わります。

生成AIを使うなら、報告書の下書きにも確認が必要

生成AIは文章を整える補助には使えても、設備の安全を保証するものではありません。測定値や機器名、日時などを誤って書き換えていないか、実際に確認していない原因を断定していないかを、人が原記録と照合する必要があります。

設備情報や顧客情報を入力してよいかも、利用するサービスと社内ルールによって異なります。承認された環境で、取り扱える情報の範囲を守ることが前提です。便利さを優先して、図面や事故情報を個人判断で外部サービスへ送る使い方は避けましょう。

AIの専門家になることだけが備えではありません。記録を正確に残す、データの意味を説明する、確認すべき点を見落とさない。こうした基礎を磨くことが、道具を使う力にもつながります。

次の職場では「学べる仕事の中身」を確かめる

新しいシステムを導入している会社でも、担当者が画面を見るだけなら、判断の経験は広がりにくいかもしれません。監視結果の検討、現地確認、原因の整理、改善提案まで、どこに関われるのかが重要です。

リエネ・エナジーには、電気理論と現場技術を結びつけて学ぶ研修プログラム「リエネアカデミー」があります[2]。公式説明では、経験者・未経験者それぞれのスキルに応じた学習が示されています。ただし、これをAI研修や全職種共通の受講内容と読み替えず、自分の配属でどのように学べるかを確認しましょう。

「AIがあるから経験は不要」でも、「経験があるから新しい技術は不要」でもありません。自分の判断を説明できる技術者として成長したいなら、リエネ・エナジーで担当する業務と教育のつながりを知ることから始めてみてください。

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参考・出典

[1]経済産業省「電気保安分野 スマート保安アクションプラン」

[2]リエネ・エナジー「教育制度」